つまらない日々に花が咲いた
加納先輩はベンチに座っていた。
「先輩?」
私は加納先輩に声をかけた。
「ああ、よかった。家にいたんだ。」
加納先輩は安心した様子で言った。
「どうしたんですか?」
私は質問した。

『さっきの彼女は?』
とは聞けずにいた。

「美緒が走って帰って行くのが見えて、
追いかけて来たんだけど、間に合わなくて。」
加納先輩の言葉に驚いた。

「追いかけて来た?なんでですか?」
私は先輩に聞いた。
「美緒に渡したいものがあって。」
加納先輩はカバンをゴソゴソして言った。
「渡したいもの?」
私は不思議に思っていた。

「はい、これ!バレンタインチョコ。」
加納先輩はチョコを取り出した。
「え?」
私は驚いた。
「あ、えっと、美緒に渡したくて作った。」

「加納先輩の手作り?」
私はそれを受け取った。
「よかった。渡せて。
俺、美緒のこと好きだから。」
加納先輩は言った。

「え?でもさっきの・・・」
私はつい口が滑って、言おうとしたのをとめた。

「ああ、あれは俺に付きまとってる女。」
加納先輩は冷たく言った。
「俺が好きなのは美緒だけだから。」
加納先輩が嘘をついているようには見えなかった。

「あの、えっと・・・」
私が言葉に困っていると
「いいよ。返事は・・・」
加納先輩は優しく言った。

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