薔薇色狂想曲
プロポーズ
花火大会当日。

碧は浴衣が着たいと意気込んで、朝から美容院に予約を入れていた。

俺も、婚約指輪は取ってきた。

準備は万全だ。

……そのはずだったのに。

クルーズ船の最寄り駅まで向かう電車内でのアナウンスに、絶望した。

『ただいま、お隣の駅で人身事故が発生したとの情報が入りました。

この列車はしばらくの間、運転を見合わせます』

……最悪のタイミングだ。

なぜこうなる。

……碧も困っているだろう。

なすすべがなく、動かない電車の中で立ちすくんでいると、麗眞くんから連絡が来た。

「運転見合わせだってな。

俺たちは巻き込まれずに済んだ。
と言っても、俺の家にお前たち以外の参加者全員、泊まらせたからなんだが。

俺の姉さんがもう駅に着いているはずだから、ロータリーにいるリムジン探してくれ。

ついでに、可愛い浴衣を着ているであろう碧ちゃんも拾っていく。

クルーズの時間までには間に合わせるから、安心しろ」


麗眞からのチャットには、頭を下げているスタンプだけを返した。

相変わらずだな、宝月家(ほうづきけ)
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