薔薇色狂想曲
間髪入れずに、今度はスマホが着信を告げた。

先程チャットをくれた麗眞くんの姉、(あや)からだ。

一応、学校は違えど、同い年だ。

「何だよ。
姉弟揃って連絡来るなんて」


『麗眞から話は聞いたわね。

貴方の大事な碧ちゃんは拾ってきたわ。

貴方たちまとめて、クルーズ船まで送るわ。

ロータリーで待っていてくれるかしら。

用件はそれだけよ。

後程会いましょ』

言いたいことを早口でまくし立てた彩は、用件を言い終わるなり通話を切った。

これで碧も安心だな。

ホームにひしめく人をかき分けながら、言われた通りにロータリーへと歩を進めた。

長いリムジンは既に到着していた。

外には、彩の執事兼恋人の矢吹(やぶき)さんがいた。

「成司さま、お待ちしておりました。

こちら、彩お嬢様よりお渡しするよう、仰せつかっております。

こちらで宜しいですね?」

プロポーズの後、折を見て書いてもらうつもりでいる婚姻届。

証人欄に彩の名前と、碧の主治医でもある理名ちゃんの名前を書いてもらったのだ。

後は碧の名前と、本籍地を埋めてもらうだけなのを確認する。

矢吹さんにお礼を言ってリムジンに乗り込んだ。
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