薔薇色狂想曲
「何かいつもより5倍カッコよく見えるんだけど。

浴衣のせいかな」


「そんな可愛いこと言うの、反則なんだけど。

花火大会より家に直行したくなるじゃん」

綺麗な花火より、プロポーズより碧の白い肢体がふと脳裏にチラついた。

……危ないところだった。

いつもならともかく、今の碧でそういうことはあまり考えないようにしている。


「さて、お嬢様方、そろそろ着きますよ。

イチャイチャは程々にして、ご準備下さいませ」

矢吹さんはそう言って、ショルダーバッグを渡してきた。

大事な指輪や婚姻届、財布やパスケース。

それらをせっせと詰め込んだ。

「ホラ、着いたわ。

早く降りなさいな」

「あれ、彩さんは行かないの?」

「私はサポートよ。

麗眞から送ってやれ、って連絡貰ったからそうしただけ。

いつか挙式をすることになったら、その時はきちんと招待してちょうだいね」

碧が矢吹さんにエスコートされて降りている隙に、言うだけのことを言ってくれた彩。

聞かれないように気を遣ってくれたようだ。
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