薔薇色狂想曲
……翌朝。

病院薬剤師の朝は早い。

適当に昨日碧が作ってくれたという夕飯を腹に流し込んだ。


……成都輪生大学(せいとりんせいだいがく)

見知った碧の知り合いも多い、大学病院だ。

「特に、来たばかりの病院薬剤師には、極力院内を案内しつつ業務に当たるように。

せっかく来てくれた、貴重な人員だ。

馴染めるように、各自フォローを頼むぞ」

「朝からため息ついてどうした?
碧と上手くいってないの?

一緒に住んでるんでしょーが、アンタたち」

朝礼が終わると、精神科医らしく、感情の機微に敏い人が声を掛けてきた。

髪はポニーテールにしてある。

白衣の下はラベンダーのブラウスにネイビーのパンツが落ち着いた印象を与える。

そのセンスはクライアントにも高評価だ。


秋山 深月(あきやま みづき)

つい最近、高校時代から付き合っていた道秋(みちあき)くんと挙式をした。

学生時代の生徒や教師から公認の仲になっていた麗眞(れいま)椎菜(しいな)と同じ日の挙式だった。

麗眞の姉と同学年の俺も出席者に数えられていたのを覚えている。

「まぁな。

皆には、来月のプロポーズ大作戦、協力してくれてて感謝しかないですよ。

でもね、最近外出ばかりだ、ってちょっと不満そうに俺に言ってきたんですよ、碧のやつ。

事情を説明しようにも、サプライズだから口外できないし。

嫌われましたかね、俺。

ってか、秋山センセイ、身体大丈夫なんですか?

無理して重い荷物とか持たないで下さいね。

秋山センセイ1人だけの身体じゃないんでしょう?」

この精神科医、妊娠中でなのである。

元々の体型が細いからか、まだそこまでお腹は目立たない。


自分より年上かつ子持ちの患者から、いろいろとありがたいアドバイスは貰えるようで、身体が本当にしんどくなるまで仕事は続けるらしい。

タフだねぇ、女って。
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