薔薇色狂想曲
「碧、ただいま」

今日もしんどかった。

後発医薬品を中心に、薬の供給が不安定だ。

薬の種類を変えたことで、客に副作用の不安を抱かせてしまった。

文句を言うばかりで、一歩も引かない患者にあたったのだ。

何とか先輩にフォローしてもらったが、モヤモヤは拭えない。


碧はテレワークでもしていたところで、
少し前に終えたところなのだろう。

お疲れ様でした、という声がした。

コホコホと咳き込む辺り、また少し発作が出るようになってきている。

ストレスをかけてはいけないことは承知しているが、なかなかそうもいかないのだろう。

物件探しの時に少し予算を上げた2LDKの6畳部屋。

2人で寝ると迷惑を掛ける、という碧の意見を汲んだものだ。

発作で俺の睡眠に影響しかねない、といっていたのを思い出す。

元来、こんなに優しい子なのだ。

……この子を、俺が幸せにしてやらないでどうする。


この部屋でほとんど1人でいることも、ストレスの要因となっているのだろう。


……何とかならないか。

碧と険悪なまま、来月、プロポーズをすることは避けたい。

とりあえず、仕事終わりの姫に紅茶でも入れてやるかと、準備を始めた。

仕事で脳のエネルギーは枯渇しているだろうから、甘めがいいだろう。

彼女は元々甘党だ。
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