薔薇色狂想曲
彼女がお気に入りの紅茶屋さんの茶葉をセットし、煮出すこと数分。

カップのソーサーで蒸らしてから、たっぷりミルクを注ぐ。

冷蔵庫から氷をいくつか出して、グラスに入れてやる。

あまり冷たくしすぎても身体を冷やすと良くない。

時々咳き込む音が部屋から聞こえる。

……やはり喘息が悪化しているか。

そう思った矢先、俺がいるリビングへと続くトアがゆっくりと開いた。

「あれ?

帰ってたんだ、成司。

おかえりなさい」

部屋の中だというのに、名前の通りのライトグリーンのブラウスにグレーのフレアスカートを履いた碧。

会議でもあったの?

テレワークでもちゃんとした服を着る辺り、良い社会人だ。

俺も彼女の姿勢から学ぶことは、沢山ある。

彼女が目ざとく、テーブルの上のミルクティーに気がついた。

「ちょうど仕事終わったから、甘いもの欲しかったの。

成司が用意してくれたの?

成司も仕事終わりなのに、ありがとう」

少し口を付けると、私好みの味だと言って、柔らかな笑顔を見せてくれた。

慣れない病院で、駆けずり回っている疲れだけは、ほんの少しだが癒えた気がした。

未だに、深月ちゃんや理名ちゃんに言われた言葉の傷は癒えないが。


……碧のおかげかな。
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