本の虫は恋煩う。
見知らぬ誰かとバッティングした次の日、私は恐る恐る図書室にやってきた。
そーっと図書室を除くも人の気配はなく。
いや、流石に2度はないよね?
それに今日は午前中だし、授業中だし、安全なはず。
さっと図書室に入り、本を探して歩きだした。
どれがいいかな、と本棚へ手を伸ばしたら。
「ねぇ」
『ひっ』
急に後ろから声をかけられて、思わず飛び上がった。
気配がなかった、だと?!
…いや、気づかなかっただけか。
どれだけ集中してたんだ、私。
って、ん?この声。
ゆっくり振り返ると、男の子の制服が見えた。
俯きがちとはいえ、お腹辺りしか見えないのは何故?
私は150センチ後半だし、特別低くはないから向こうの背が高いのか。
話しかけられたことに混乱して、余計なことが頭に浮かんできた。
少しの沈黙が降りたあと、男の子が口を開いた。
「弥上世那さん、だよね?」
『……なんで、名前』
見知らぬ男子に名前を知られていた…!?
しかもフルネーム!
今まで名前なんてロクに当てられたことなかったよ?
何ならかすりもしない人だっていたからね?