本の虫は恋煩う。
驚いて思わず顔を上げると、限界まで目を見開く。
『………』
い、イケメンがいる。
めちゃくちゃモテそうな美少年がいる。
マッシュヘアに綺麗な二重、黄金比に近い位置につく顔のパーツ。
顔面偏差値どうなってんだ、と思うくらいに整った男の子に固まってしまった。
相手は相手で「おや」と言いたげな顔をして私を見下ろしていた。
「いきなり話しかけてごめんね。
僕の名前は近衛恵。
君のクラスメイトだよ、よろしくね」
はにかみ笑顔で気さくな雰囲気を纏う近衛君。
めっちゃ優しそうだし、絶対良い人だ。
きっと人気があって友達も沢山いるんだろう。
『…えっと、よ、よろ…』
返さないのも失礼だと思い、“よろしく”と言いかけて止まる。
…そうだ、普通に考えたらスクールカースト上位にスクールカースト底辺の不登校女子が話しかけられるなんて本来あってはならないことでは?
それでいて、よろしくなどとどの口が言えるのか。
私は空気でいいんだ、そうでなきゃ、きっとまた傷つく。
結局口を閉じて、また俯いた。