本の虫は恋煩う。
そこから黙り込んた私に対して、近衛君は呆れた様子もなく優しい口調をそのままに言葉を紡いだ。
「…無理に言わなくていいよ。
今日は挨拶したかっただけだから」
『…え?』
挨拶?私に?
あからさまに戸惑っているのが伝わったのか、近衛君は簡潔に語る。
「そう、君と仲良くなりたくて」
その一言は、私にとって衝撃だった。
あまりにも現実味がなくて、耳を疑った。
仲良く、なりたい?
『…私なんかと?』
ふ、と自嘲の笑みが溢れでた。
有り得ない、そんなの。
私はそんな甘い言葉を貰えるような可愛いヒロインなんかじゃないのに。
どうせ、罰ゲームか何かのやらせなんだろうな。
しかし、次の近衛君の声で不信感で満ちていく思考がストップした。