本の虫は恋煩う。
放課後の図書室で、私と近衛君の本に関する雑談が始まった。
話を聞くに、どうやら近衛君も相当な本好きらしく、最初は世界が違うかと思ったけれど、案外同類なのかもしれないと思った。
とはいえ、近衛君の顔が良すぎるせいで、まだ目は合わせられないけどね。
近衛君は持参したらしい本を見せて言う。
表紙を見ると、可愛らしい女の子が描かれていた。
あ、それは。
「弥上さんは“明日の影ふみ”読んだことある?」
鏡の孤塔など、多くのファンに好かれている有名な文豪さんの名作の一つだ。
『あるよ、何個か物語が詰まってる作品だよね?』
読んだのはだいぶ前だけれど、背筋がゾクゾクするような話が多くあったように思う。
私が知っていたことに対して、近衛君は嬉しそうな顔をして、頷いた。
「そうそう、その人の書く作品が好きで集めてるんだよね」
『なるほど、でも何作も買うとなるとお金足りなくない?』
ライトノベルや表紙が薄い本ならば比較的安く済むが、きちんとしたものを買うとなるとかなりお金がかかるはず。
普通の中学生が集めるとなると、お小遣い的に難しいのでは?