本の虫は恋煩う。

 

 昼食後、家から近いスーパーへ出かける。
 味噌を買うついでに何かアイスでも買おうかな。
 美味しいのはモナカのやつと、小豆のバーアイス。
 
 外は無表情、中はルンルンの状態でスーパーに向かっていると。

 「あ!
 あれ、弥上じゃね?」
 「えっ、どれどれ?!」
 『…っ!』


 ドクリと心臓が嫌な音を立てた。


 この、無駄に甲高(かんだか)い声達は…。


 数々のトラウマが脳内でフラッシュバックしかける。
 


 あぁ、神様、なんで?

 どうして、ここにあの人達がいるの…?

 まだ、私を(いじ)めたりないの?

 不幸ばかり思い出すのはもう疲れたよ…。


 たちまち叫びだしたくなるような感情に襲われた。
 無意識にバッと身体を(ひるがえ)し、スーパーとは逆方向に全力で駆け出す。
 私は戦おうとなんて思わない。
 そんなことより、絶対に逃げなければ。
 だって、捕まってしまえば最後、逃げられなくなるから。

「逃げた!やっぱりアイツじゃん!」
「お前私達から逃げられると思うなよ!」

 小学校時代、私を精神崩壊寸前まで追い詰めたイジメグループの2人だった。 
 私が教室に入ることを恐れるようになった原因の人達でもある。

 ふざけないでよ、なんで今更関わってくるの。
 良い加減、放っておいてよ。

 親戚の家が変わり引っ越してから、もう二度と会うことは無いと思ってたのに、最悪だ。



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