本の虫は恋煩う。
「は、何アンタ、ソイツかばうつもり?」
「そんな地味な子庇う必要ないでしょ」
メイクで飾った綺麗な顔を歪ませる女子2人。
近衛君は氷よりも一層冷たい眼差しを彼女達向けた。
どんな彫刻より美しく、どんな化け物よりも恐ろしい無表情だ。
「大事な友人を守って何が悪いの?
それに弥上さんは地味じゃないから。
それにさ、君が彼女を地味なんて言う資格ないよ。
なにせ素顔も見せられないんだから」
くす、と冷笑を浴びせて毒を吐く近衛君に瞬きが止まらない。
びっくりしたあまり、涙が引っ込んでしまった。
え、誰この人、こわ。
いつもニコニコ優しく微笑んでる近衛君は何処へ?
「…っ!このクソ野郎!」
「覚えときなさいよ!」
女子2人はカンカンに怒って赤面しながら去っていってしまった。
近衛君は冷たい顔から優しい顔に戻ると、私の顔を見る。
切り替え上手すぎません??
「弥上さん、目を冷やそうか」
『…うん』
心配そうな顔をした近衛君に手を引かれたけれど、嫌な感じはしなかった。
その後、近衛君は私の事情を一度も何も聞かなかった。
言わずと察してくれたようだ。
気を遣わせてしまったな。
しかし、純粋に助けられたことが嬉しくて、いつか話せる時が来たら話したいと思った。