本の虫は恋煩う。



 本を元の場所に返すと、別の本を2、3冊探して借りた。
 保健室に戻ろうと本を抱えた時、ガラガラの図書室のドアが勢いよく開いた。
 
 近衛君はもっと丁寧に開けるから、恐らく違う人だろう。
 びっくりしてその場に止まっていると、一人の女の子が入ってきた。
 わー、ボブの茶髪が可愛い美少女だ。
 真ん丸の目に、ぷるんとした唇。
 同じ女子とは思えない天使さだ。

「あ、いた!
 アナタが弥上世那さん?」

 いきなり名前を呼ばれたことに驚いて振り返った。
 私より背が低いその子は腰に手を当てて、こちらを睨みつけてくる。
 え、なんでそんな警戒してるの?

『えっ、は、はい』

 圧を感じて咄嗟(とっさ)に頷くと、「そう、ちょっと顔貸して」とヤンキーみたく誘われた。
 え、これ付いていったらボコられルートとかじゃないよね?
 行きたくないな、と迷っていたら「早く」と一喝されたため、しぶしぶ跡をついていった。
 辿り着いたのは人のいない教室。
 他に人はいなくて、彼女一人だった。
 とりあえずリンチではないようで安心する。
 美少女と真っ向から話し合う。
 とはいえ、コミュ障だから目は見れないけれど。

「ねぇ、アナタ、近衛恵の何なの?」
『近衛君の何…?友人ですが…』
 
 唐突な質問に驚きながらも、答えた。
 君に友人と認めてもらえているようだから使わせてもらう。
 すると、キョトンとした美少女。
 


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