本の虫は恋煩う。
天使に見紛うほどの美少女である野山さんと仲良くなった後、図書室での雑談に彼女も参加するようになった。
私にくっつくさんを唖然とした顔で見下ろす近衛君。
「は?何でがここにいるの?」
心做しか不機嫌なように見えた。
少し低くて棘のある声に、野山さんは目を三角にして言い返す。
「良いじゃない別に!
私だってゆきと友達なったもん」
「いや、僕と約束してるんだから絵茉は呼んでないよ」
私を挟んで口論している幼馴染みらしい近衛君と野山さん。
仲いいのか悪いのか分からないな、この人達。
「てか絵茉は本読まないんじゃないの?」
「あんまり読まないけど聞くことくらいできるし」
あまり本を読まない、と聞いて私はふむと考えた。
いつもは好みで選ぶけれど、今日は読みやすい本を紹介しようかな。
争う2人を他所に本を取るべく席を立った。
大体“あの名作”はどこの図書室にもあるものだ。
…うん、あったあった。
本を一冊取った後、席に戻った。
喧嘩する2人を仲裁して、間髪入れずに本の雑談に入る。