本の虫は恋煩う。
近衛君や野山さんと過ごすようになって早ひと月が経過した。
季節はすっかり夏である。
「ねぇ世那、夏祭り行かない?」
『夏祭り??』
花火がプリントされたパンフレットを見て、目を瞬かせる。
夏祭り、それは昔から友達もちゃんとした家族いない私には縁が無いイベントだった。
野山さんは見た目の明るさ通りにパリピ属性でアウトドア派らしい。
夏祭り、楽しそうだけれど、人混みがなぁ。
「絵茉、弥上さんは苦手なんだから無理させたら駄目だよ」
夏祭りのパンフレットを見つつも近衛君は私を心配して野山さんを諌める。
あ、人混み苦手なのバレてたのか。
「えー、絶対楽しいのにー」
世那が行かないなら行かなーい、と呟いた後、肩を落とし、しゅんとした様子でパンフレットを仕舞おうとする野山さん。
うっ、罪悪感が…。
私が人混み苦手なせいで、野山さんの楽しみを奪うのは…。
『わ、分かった。
私も花火見たいし、行こうよ』
内心断りたい気持ちもあったが、押し切った。
たまには、行くのもありかもしれない。
友達と夏祭りなんて青春っぽいし。
「ほんと!?
嬉しい!世那は浴衣とか持ってる!?」
野山さんは歓喜のあまり私に飛びついてきた。
割と痛めのタックル受け止めながら、考える。