本の虫は恋煩う。
 


『え、どうだろ…ないかもしれない…』

「ないならうちの貸すからさ、浴衣着て行こう!」


 浴衣なんて着たことないな。
 着方も想像できないし。
 そう言ったら、野山さんは自信満々に胸を叩いた。


「着付けは私できるよ!

 毎年夏祭り行ってるから任せて!」 


 それを聞いて『なるほど』と納得した。
 浴衣なんて滅多に着れるものじゃないから、着れるなら着たいかも。
 野山さんに着物と着付けをお任せすることにした。


「2人が行くなら僕も行きたいな」

「えー、も?」


 会話に入ってきた近衛君に、不満そうな顔を一切隠そうともしない野山さん。
 それに対して近衛君は「なんか文句あるの?」と笑顔の圧をかけた。
 この2人なんか喧嘩してる時人格変わるんだよね、面白い。
 私はコクリと首を縦に振った。


『いいね、一緒に行こう』


 近衛君も浴衣を着るらしく、似合うだろうなと思った。
 近衛君といい、野山さんといい、私の友達は顔面偏差値が良すぎるよね。



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