ひとりぼっち歌姫とヘッドフォンの彼
 生い茂る雑草の上にあぐらをかいてギターをお腹の前に置くと、左手でネックを握って右手で弦に挟んでいたピックを取る。
 取った拍子にボーン……と、はじかれた弦が柔らかい音を鳴らした。

 体中に熱が循環して、体の緊張がほどけていく。

 手始めにCコードを鳴らした。
 ド、ミ、ソの和音が空気を震わせる。
 その気持ちよさに、体がみるみる漲っていく。
 体の中の淀んだ感情を息にして吐いてから、澄んだ空気を吸い込み、歌にして放つ。

「ラーララーラー……」

 いつからか私は、このギターが体の真ん中にないと歌えなくなっていた。
 
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