ひとりぼっち歌姫とヘッドフォンの彼

　エモい……？
　エモいって、どういう意味だっけ……

「チッ」

「！？」

　なぜか舌打ちされて、涙目でギターを抱きしめる。
　ヘッドフォンの彼は立ち上がって、そんな私を睨みつけるようにしながらこちらに降りてきた。

　えっ……え？　なに……！？

　とうとう目の前に立った彼は、私より頭一つ分背が高くて、その威圧感になす術もなくヨロヨロと後ずさる。

「あ、の、えと、」

　相変わらず凄い目力で私を見続ける彼の、やたら整った顔が余計にその圧を増幅させていた。
　何をされるかわからない恐怖で、目尻に涙が滲む。
　目を逸らすことも許されず、ひたすらにぎゅう、とギターを抱きしめる。

「あ……あの……お金、ないです……」

「あ゛？」

　こ、怖い……！

　命の危険を感じた私はとうとう腰が抜けてその場にぺしゃっとへたり込んだ。