ひとりぼっち歌姫とヘッドフォンの彼
 きっと私の駄目さにがっかりしてるだろう。もう用が済んだのならどこかに行って欲しい。

「ちょっと貸して」

「えっ」

 またギターを奪われてしまった。

「あ、あの、」

 今度はピックを器用に動かして美しいアルペジオを奏で始める彼に、私はオロオロするしかできない。

「今度はそこで黙って見とけ」

「え……?」

「俺の曲、良いと思ったらスタオベな」

 スタオベ…? スタンディングオベーションのこと?
 えっ、私一人でするの?

 ヘッドフォンの彼は、アルペジオにのせて歌い始めた。
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