ひとりぼっち歌姫とヘッドフォンの彼
ヘッドフォンの彼
「あー、うん。 いったん止めよう」
軽音部の大鳥部長が爽やかな笑顔で言って、音楽室に響いていた音楽が止められた。
音楽はまだ1番のサビに入ったところだった。
ステージ上の私はマイクをギュッと握りしめて、そこに立ち続けるだけで精一杯で。
そんな私を、前から三段目に作られた審査員席のど真ん中に座る大鳥部長が、元々細い目をさらに細めて見ている。
「……大丈夫? 震えてるけど」
部長の両サイドにそれぞれ二人ずつ座る幹部たちは、私を横目で見てヒソヒソと話し、クスクスと笑っている。
「あ……の……」
私は部長の後ろにあるギターケースに目くばせして、ゴクンと恐怖を飲み込んだ。
「……やっぱり……ギターを持たせてくれませんか……?」
私に強く握られて熱くなったマイクが、か細く震えた声を拾って音楽室に情けなく響かせる。