ひとりぼっち歌姫とヘッドフォンの彼
ここから



 たった一度奇跡みたいなことが起こったところで、私の日常が変わるわけじゃない。

「やっぱり実験失敗したのかな」

「ちょっと、聞こえるってー」

 帰りの挨拶が終わった直後の教室で。
 遠巻きに私を盗み見る女の子たちがクスクスと話す内容は、大体予測できる。私の髪が実験に失敗して爆発した頭に見えるって言いたいんだ。
 チリチリ、爆発、鳥の巣。
 私をからかうためのキーワード。
 このほかにダミ声、ガラガラ、男みたいな声……そこに昨日酒焼けが追加された。
 こんなにいじりやすい人間はなかなかいない。 神様はどうしてこんなハンデを私に与えたんだろう。
 悲しい、悔しい、辛い苦しい……そういうことを考えだしたらキリがなくて、すぐに泣いてしまう。
 だから私は歯を食いしばって俯く。
 見えない、聞こえない、感じない。自分自身を守るための呪文。
 友達が欲しいなんて、大それたことは言わない。なるべく平和な三年が過ごせますように。
 それすら贅沢な願いなのかもしれないけれど。
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