ひとりぼっち歌姫とヘッドフォンの彼
 放課後になっても、教室にはまだまだ友達と話すのに夢中になってる人たちが残っている。
 いま廊下に出ればたくさんの人とすれ違ってしまうので、皆がいなくなるまで机に突っ伏してやり過ごすことにする。

「津木沼さーん」

「!」

 上から降ってきた男の子の声にビクッと肩を跳ねさせた。
 恐る恐る顔をあげると、クラスメイトの山岸くん。
 ベースの入ったケースを肩に掛ける山岸くんは、軽音部の仲間を引き連れてニヤニヤといやらしい笑みを浮かべている。

「昨日オーディション受けたんだってー?」

 山岸くんはしゃがんで机に両腕を置き、私の顔を下から覗き込んだ。
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