ひとりぼっち歌姫とヘッドフォンの彼
 落胆した私は、歩道橋の床を見つめた。

「俺と組まなかったらな」

「……!」

 顔をあげると、いたずらを仕掛ける子供みたいにニッと笑う篠井くんがいた。

「相方なら新曲も未発表曲も、ボツ曲だって全部聞き放題。どうする?」

 私が、SOOTの相方?
 そんな夢みたいな話、あっていいのかな。
 そもそもまともに人前で歌ったことのない、ギターがないと歌えないような私なんかを日本中にいるSOOTファンが許してくれるわけない。

 ……でも。

『お前の歌』『エモくてすげぇかっこいい』

 昨日篠井くんが言ってくれた言葉が、私の背中を押した。


「……やりたい」

 篠井くんとなら、どんなことがあっても頑張れる気がする。

「篠井くんと一緒に歌いたい……!」

 今日一番の大きな声で言った私に、篠井くんが嬉しそうに笑った。
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