ひとりぼっち歌姫とヘッドフォンの彼
 その時、背後の玄関のドアからガチャガチャッと音がした。

 続けてドアの向こうから「ん?」と声がする。

 ! お母さん!?

 ハッと時計を見上げてみるけど、時刻は18時。まだ帰ってくる時間ではないはずだ。

「ちょっと!鍵開いてるじゃない!」
 
 あっ閉め忘れてた……って、そんなこと考えてる場合じゃない!ギター隠さないと!!

「音葉!必ずカギ閉めなさいってあれほどー……」

 怒りながら中に入ってきたお母さんが、目を丸くした。
 ギターを隠しきれなかった丸腰の私を見つけたからだ。

「……何をしているの?」

 お母さんの目に、失望の色が混じる。

「あ……えっと……」

「近所迷惑になるからギターはもう弾かないって約束したわよね?まだやめてなかったの!?」

「あ、で、でも、音は出してないよ! 指で押さえてただけで……っ」

「はぁ?なんでそんなことする必要があるのよ!」

「そ……れは……」

 口ごもる私にお母さんは、ひたいを押さえて大きなため息をついた。
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