ひとりぼっち歌姫とヘッドフォンの彼
 ……こんな私でも褒めてくれる人もいるんだって知ったら、お母さんどう思うんだろう。
 少しは私を見なおしてくれるかな。 認めてくれたりしないかな

「はやくそれしまってきなさい!」
 
 お母さんはイライラを吹き飛ばすように大袈裟な足音をさせて洗面所へ手を洗いに行く。
 私はギターを抱きしめて、喉をごくりと鳴らした。
 そして戻ってきたお母さんの前に立ち、目を見て声をかける。

「お母さん」

「? なによ、改まって」

「あのね……実は明後日、お祭りのライブに出ることになって」

 お母さんがピタ、と動きを止めた。

「誰でも申し込めば参加できる公開コンテストなんだけど、優勝したら夜の大きいステージで演奏できるんだって。一緒に組んで出てくれる人が凄い人でね、私の歌、かっこいいってー……」

「やめなさい!」

 私の言葉を遮ったお母さんの声は、キン……と耳をつんざくような金切声だった。

 その口元はワナワナと震えている。
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