ひとりぼっち歌姫とヘッドフォンの彼
 歌いながら、鳥肌が立つ。
 なんて優しい曲だろう。
 なんだか篠井くんみたいだ。
 とっつきにくいように見えて、あったかい。あったかすぎて泣けてくるくらい。
 ……たくさんの人に、聞いてほしいな。 この優しい気持ちを、たくさんの人に感じて欲しい。

 弾き終わると、篠井くんと目があって思わずこみあげた。

「いっ、いい曲すぎる……!」

 篠井くんは目尻を下げて笑った。

「楽しくないと意味ねぇんだよ」

「え?」

「音楽は、音を楽しむもんだ。 眉間に皺寄せてやるようなもんじゃねぇ」

「……!」

 私さっき、眉間に皺が寄ってた……?

「つーか練習しなくても出来んじゃん」

「! ほんとだ!」

 いま、なんの迷いもなく弾けた!
 何でだろう? この二日間ずっと苦戦してたのに…!
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