ひとりぼっち歌姫とヘッドフォンの彼
 私の隣に立った篠井くんに、幹部たちが目を丸くする。

「な……っ、篠井奏太……!?」

「やば!私ファンなんだけど!」

 沸き立つ軽音部の幹部たちの真ん中で、部長だけはじっと篠井くんを見据えている。

「……久しぶりだね。篠井くん」

 そのただならぬ空気に釣られて、幹部たちが押し黙った。

「三年前の全小以来かな。僕は今でもあのときの結果を認めてないんだ。あれは完全に個人の人気票でー……」

「すいません」

 篠井くんが口を挟んだ。

「誰でしたっけ」

 部長のこめかみがヒクついて、場の空気が凍りついた。
< 49 / 83 >

この作品をシェア

pagetop