ひとりぼっち歌姫とヘッドフォンの彼
「……ハハハ。面白いなぁ、篠井くんは」

「別に冗談言ってないっすけど」

「ハハハハハハ」

 目が全然笑ってない部長の負のオーラをものともしない篠井くんが、私の頭に手を置いた。

「今日は俺、コイツと出るんで。お手柔らかにお願いしまーす」
 
 そう言って頭を下げるので、私も一緒に頭を下げるよりほかにない。

「は…?こんな素人以下のダミ声と!?SOOTが組むって!?ふ……あっはは!面白い!知ってるかい?夜のメインステージに出れるのは一組だけ。つまり、僕たち軽音部だけー……」

「それはどうだろうな」

 少し食い気味に言った篠井くんの声は力強く、迷いがない。

「へぇ!これは楽しみだ!オーディションの二の舞にならないことを祈っているよ」

 高笑いしながら去っていく軽音部の人たちに、篠井くんは舌打ちをした。

「うっざ」

「し、篠井くん、部長と知り合いなの?」

「さぁ?マジで覚えてねぇ」

 篠井くんの頭の上にははてなマークが浮かんでいる。

「そ……そうなんだ……」

 部長は相当恨みを持ってそうだったけどな……

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