ひとりぼっち歌姫とヘッドフォンの彼
「間もなく本番始まりまーす!一番手の方スタンバイお願いします!」

 スタッフさんが言って、私と篠井くんは顔を見合わせる。 そこへ田中さんが中に入ってきた。

「ん?どうかした?」

「あの……ギターがなくて……」

「え!?あの黒いマーチン!?」

「確かにここに置いといたんですよ。なんか知りませんか田中さん」

「基本的に出演者以外入ってるのは見てないけど…とっ、とにかく警察…!」

 大慌ての田中さんが外へ走って行こうとしたとき、

「お疲れ様でーす」

 そこに軽音部の一行が控えテントにやってきた。

「あ!大鳥くん!黒のマーチン見なかった?なくなっちゃったんだって!」

「黒のマーチン……?」

 部長は私にちら、と目くばせをすると、フ、と口角をあげた。
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