ひとりぼっち歌姫とヘッドフォンの彼
「チッ。いちいちうぜぇな、あいつら」

「……でも、貸してくれた、から」

 いつものギターじゃないけど、ないよりまし。
 いなくなったギターを探しに行きたい気持ちでいっぱいだけど……田中さんやスタッフさんが探しに行ってくれた。
 たくさん楽器がある中であんな傷だらけのギターをわざわざ持ってくなんて……誰かがケースを間違えて持ってっちゃったのかも。 きっとそうだ。 田中さんが警察に連絡するって言ってくれたし、すぐに見つかるはず。

 私は自分にそう言い聞かせて、軽音部から借りたギターをケースから出した。
 ネックがかなり太くて私の手で握るには少し苦労する太さだ。それに弦が錆びついていて、ひどい音。

「は?」

 その音を聞いた篠井くんが顔をしかめた。

「なんだそのギター、全然使い物になんねぇじゃねぇか!あー、時間ねぇ、弦変えるぞ!」

 篠井くんは急いで替えの弦を取り出して今ギターについてる弦をペンチで切り始める。

「ご、ごめん……」

「なんでお前が謝るんだよ」

「ごめん……」
 
 篠井くんが舌打ちするのをまたごめん、と言いそうになって飲み込む。
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