ひとりぼっち歌姫とヘッドフォンの彼



「それでは、夜のメインステージ出演権を獲得した、優勝者の発表です!」

 時刻は16時30分。 水色の空が少しずつ茜色を混ぜようという頃。

「優勝は…………須加中軽音部ー!!」

 ワァァ、と会場が沸いた。
 拳をあげて喜ぶ須加中軽音部がステージに上がる。優勝を勝ち取った感想を聞かれた大鳥部長が、大人びた声を向けられたマイクにのせる。

「想定外の順番変更があってメンバーも動揺したんですけど、皆さんのおかげでいいライブができました。これは僕たちだけでは勝ちえなかった優勝です。本当にありがとうございました!ぜひメインステージも見に来てください!」

 大きな拍手の中に、さすがだねとか、夜も見に行こうとか、興奮気味に話す来場者の声が混ざっている。
 私と篠井くんは会場の後ろの方に立って、その光景をぼーっと眺めていた。
 私はさっき「落とし物で届いてました」と警察の人が持ってきてくれた黒のマーチンをギュッと抱きしめる。

 届けてくれた人のことを聞くと、

〝君たちと同じくらいの男の子たちだったよ〟

 と、警察の人は言った。
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