ひとりぼっち歌姫とヘッドフォンの彼
「……音葉」

 お母さんの声にビクッと肩がはねる。
 『どうして』『いい加減にして』『お母さんを悲しませないで』
 そんな罵倒を受ける覚悟をして、目をギュッと閉じた。

「……こっち来なさい」

 お母さんは立ち上がって、寝室へ向かう。
 来る未来に怯えながら、お母さんのあとについていった。

「ここ座んなさい」

 お母さんが指さしたのは、鏡台のスツールだった。

「え……?」

「なにボーっとしてんの。ほら早く」

「う、うん…」

 言われるがまま私はスツールに座った。 するとお母さんが私の髪を触って確かめる。
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