ひとりぼっち歌姫とヘッドフォンの彼
「今日ステージ立つんでしょ。大丈夫なの?こないだ全然歌えてなかったけど」

 こないだ……?

「! もしかしてお祭りの日見に来てくれたの!?」

 お母さんはフッと笑った。

「言ったでしょう。恥かくって」

 何も言い返せない私は無言で頷く。

「でもね。若い内にたくさん恥をかけばかくほど、かっこいい大人になれるのよ。はい、できた!」

 お母さんは私の背中をポンと叩いた。ボリュームが落ち着いた私の髪はパーマをかけたような艶のあるカールになっていた。前髪の編み込みが可愛い。

「ありがとう……!」

「恥かきに行ってらっしゃい」

 そう笑顔で言われたら、フッと肩の荷が下りたようだった。

「うん……!」


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