ひとりぼっち歌姫とヘッドフォンの彼
SOOT

 朝の挨拶が終わってすぐ、私は体育館に向かった。
 ステージ袖でギターの準備をする篠井くんの背中が見えて、駆け寄る。

「篠井くんっ」

「おー、校長が話あるってー……」

 と、私を見た篠井くんが固まる。

「あっ、髪、お母さんがやってくれて……変かな」

 自分では気に入ってるので、ちょっとドキドキしながら聞いてみる。

「……別に」

 篠井くんは無表情で言ってそっぽを向いてしまった。
 別に、か。 別に変じゃないってことでいいのかな…。


「あの子お姫様みたい。かわいー」

 どこからか聞こえた声に、誰だろう、と思わず見渡した。
 するとその声の主と目が合って、なぜかキャーッと逃げられる。

「?」

 お姫様はどこにいたんだろう…?


 それから私たちは校長先生の激励を受けてから、控え室に向かった。程なくして司会がマイクを通して文化祭の始まりを告げる。
 私は緊張を和らげようと、ギターのチューニングを始めた。
 
「え……」

 チューニングが合わない。ペグを回して合わせようとするけど、勝手に巻き戻って音が下がってしまう。

「ちょっと貸して」

 篠井くんが私のギターのペグを確認する。それからドライバーでいじったりして、もう一度チューニングする。でも合わない。
 篠井くんが舌打ちした。

「壊れてる」

「…!」
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