ひとりぼっち歌姫とヘッドフォンの彼
 そして私たちはステージに上がった。
 怒号にも近い大きな声援が体育館を包む。

「ヒュゥー!!待ってたぞー!!」

 その勢いに、足がすくんで転びそうになるのをなんとか堪える。篠井くんがギターのセッティングをして、私はマイクスタンドの前に立った。今までのどのステージよりも多い、人の視線。照明の明るさにクラクラする。

 負けるな。頑張れ私…!

 拳をギュッと握って、篠井くんのアイコンタクトに頷く。すると篠井くんがコツコツコツ、と合図をして音を鳴らした。

「っ……」

 その瞬間、今までの失敗たちが蘇って、世界が灰色に変わった。

「……」

 怖い。

「……は、」

 息ができず、ヒュッと喉が鳴る。地震でもないのに地面がグラグラと揺れて見える。耳鳴りがして何も聞こえない。
 怖くて、顔が熱くて、冷や汗が吹き出て、体がギシリと固まる。

 やっぱり だめだ

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