人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜

緊張を覚えながらヴァイオレットもサクラに話しかける。しかし、サクラは申し訳なさそうに「いいえ」と言い、首を横に振った。

「フェリシアーノからこれを渡すように言われ、届けに参りました」

サクラがそう言い、傍らに置かれている鞄の中から何かを取り出す。オレンジのアルストロメリアの花が描かれた封筒を見て、イヴァンはあからさまに顔を顰めた。ヴァイオレットは何の封筒かわからず、首を傾げる。

「サクラ様、この封筒は一体ーーー」

「夜会の招待状だよ」

サクラではなく、イヴァンがヴァイオレットの質問に答える。イヴァンはため息を吐き、顔を手で覆っていた。

「夜会……」

家庭教師の話していたことをヴァイオレットは思い返す。夜会とは、貴族や王族が夜に集まり親交を深めるためのパーティーである。人が多く集まる夜会は、人狼であるイヴァンにとっては苦痛そのものだろう。

「何でこのタイミングで夜会を開こうという話になるんだ？シャーデンフロイデの件は解決してないだろう？」