人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
イヴァンが訊ねると、サクラは「それは……」と少し言いにくそうにしていたものの、頰を赤くし、黒曜石のような瞳をあちこち動かせながら言う。

「国王陛下のご命令です。その、フェリシアーノに、結婚相手を見つけるための……」

「なるほど。そうでしたか」

ヴァイオレットは納得し、頷く。貴族や王族に生まれた者は後継者を残さなくてはならない。それには、同じほどの地位を持った魔法家系との結婚は必要不可欠である。しかし、フェリシアーノは結婚はおろか婚約の話すらない。現国王が焦って夜会を開くのも当然だろう。

「フェリシアーノの婚約者探しなら、何でヴァイオレットと僕が行く必要があるんだ?まさか、みんなの前でヴァイオレットに求婚でもするつもりなのか?夫のいる目の前で!」

イヴァンは苛立っているようで、頭をガシガシと掻きながら言う。これほど感情を表す彼を見るのは初めてで、ヴァイオレットは驚きと同時に初めて見るイヴァンの表情に心が動いていた。

(イヴァン様は、こんな顔もされるのね……)
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