人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜

イヴァンの横顔からヴァイオレットは目が離せない。まるで焼き付けるかのように見つめてしまう。だが、イヴァンは夜会の出席のことが気になっているようで、ヴァイオレットの方を見ることはなかった。アクアマリンの瞳は、彼の目の前にいるサクラから離れることがない。

（私の視線に気付いていないのかしら？イヴァン様、少しは私のことも見てほしいのに……）

サクラという大切な客人の前だというのに、ヴァイオレットはふとそんなことを思ってしまう。しかし、一度溢れ始めた感情は誤魔化すことはできず、ヴァイオレットはただ胸が痛むのを感じた。まるで転んで擦り傷ができてしまった時のようだ。

（痛い……）

痛みにヴァイオレットは顔を顰めてしまいそうになる。しかし、人の気持ちは言わなくては伝わらない。ヴァイオレットの横で、イヴァンとサクラの話は続いていく。

「フェリシアーノが、友人夫婦としてぜひ出席してほしいと言っていました。自分の婚約者が決まる瞬間を、二人に見届けてほしいと」

「独身のご令嬢ばかりが集まる夜会だというのに、国王陛下はそれを許可したのか……」

「二人を出席させてくれないのなら、夜会には出席しないと駄々を盛大にこねていましたから」