人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜

「ほら、大丈夫でしょ？」

イヴァンがヴァイオレットにもう一度笑いかける。ヴァイオレットの中に安堵が込み上げ、真っ青だった顔に血色が戻った。

「避難誘導を再開します。……どうか、無理はなさらないでください」

ヴァイオレットはそう言ってイヴァンに背を向け、怯えて動けない人たちに声をかけ、避難を進めた。



「もうすぐ屋敷です！皆さん、頑張ってください！」

一人ひとりに励ますように声をかけながらヴァイオレットは歩く。時折り背後からはシャーデンフロイデの鳴き声が聞こえ、その声に空気が大きく振動し、恐怖から足を止めてしまう人もいた。

ヴァイオレットも悲鳴を上げそうになり、その度に強く拳を握り締めて恐怖を誤魔化す。今一番大変なのは、シャーデンフロイデと戦っているイヴァンだと何度も自分に言い聞かせた。

「ヴァイオレット！！」

屋敷からアイリスが走って来る。アイリスはヴァイオレットを強く抱き締め、「無事でよかった……」と息を吐いた。ヴァイオレットも「ありがとう」とアイリスの背中に腕を回し、数秒間互いの温もりに触れる。