人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
襲撃を受けた住民たちは、この悪夢のような出来事を嘆く声を上げたり、イヴァンのために神に祈りを捧げたり、屋敷の中庭は重苦しい空気が漂っている。

「イヴァン様一人で大丈夫かな?あんなに大きな怪物、学校を首席で卒業した優秀な魔法使いであるイヴァン様でも厳しいんじゃ……」

リオンまでもが暗い言葉を口にした。ヴァイオレットがすぐに否定しようと口を開いた刹那、中庭の扉が開く。

「一体何の騒ぎですか?」

トイレに行っていたサクラが驚いた様子で外に出て来る。ヴァイオレットはサクラに駆け寄り、説明した。

「サクラ様、シャーデンフロイデが現れました!民家が次々と被害を受けているため、ここに住民の方々は避難してもらっています。イヴァン様がお一人でシャーデンフロイデと戦っています」

ヴァイオレットの説明を聞いたサクラは目を大きく見開き、拳を握り締める。そして全員に聞こえるように大きな声で「今から私もイヴァンと共に戦います!」と言い、瞬間移動の魔法を使ってその場から消えてしまった。

「サクラ様も戦ってくれるなら、きっと大丈夫よ」

リオンにヴァイオレットは笑いかけ、まだ怯えている人々の不安を取り除こうと声をかけていく。魔法が使えない自分にできることは限られているためだ。
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