人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
「昔々あるところに、エラという名前の美しい少女がおりました」

読んだ本を思い出しながら、不安げな人々に穏やかな口調でヴァイオレットは語りかける。人々の気持ちをシャーデンフロイデから逸らすには、この方法しかないと考えたためだ。

サクラがイヴァンの元に向かって、約五分ほどが経った。意地悪な継母と姉にいじめられていたが、魔法使いのおばあさんによって美しいドレスや靴を与えられ、王子様と結ばれるというロマンチックなお伽話をヴァイオレットが話し終えたその時である。

地面に魔法陣が浮かび上がり、その中からイヴァンとサクラが姿を見せた。二人の表情はどこか硬い。

「イヴァン様、サクラ様、ありがとうございました。大丈夫ですか?」

ヴァイオレットが二人に駆け寄り訊ねると、避難している住民たちも「奴は?シャーデンフロイデはどうなりましたか?」と口々に訊ねる。イヴァンがゆっくりと口を開いた。

「僕らは大丈夫。でも、奴には逃げられてしまった。居所を突き止めたかったができなかった。申し訳ない」

「破壊された住居は全て魔法で元に戻っています。なのでひとまず安心してください。シャーデンフロイデの居所は必ず突き止めます!そして私とイヴァンが皆さんを守ると約束します!」
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