人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
サクラも口を開き、避難した人々をグルリと見渡しながら言う。その表情はどこか凛々しく、人々は言葉を失い、頰が赤く染まっている人も何人かいた。

シャーデンフロイデが倒されたわけではない。そのことに怯えている人もまだいたものの、家を治してもらえたのならいいじゃないかと誰かが言い、避難していた人たちは「ありがとうございます」とイヴァンたちに声をかけ、帰って行く。

「今回の一件、フェリシアーノに報告をします」

「頼む」

サクラはイヴァンにそう言った後、王宮へと瞬間移動の魔法を使って消えた。サクラが立っていた場所を、しばらくヴァイオレットは見つめていた。サクラがいなければ、イヴァンは危険だったかもしれない。そんなことをふと考えてしまい、ヴァイオレットの手が震えていく。

「私も、魔法家系だったらよかったのに……」

ポツリとヴァイオレットは呟く。昨日も、そして今日も、ヴァイオレットはイヴァンに守られていた。イヴァンと共に戦うことはできなかった。非魔法家系なのだから当たり前のことで、ヴァイオレットが頑張ったところで魔法を使うことはできない。
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