人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
守られてばかりは嫌だ、ヴァイオレットは思った。自分にできることは、ただ人を安全な場所まで避難させ、落ち着かせる。その間にイヴァンが危険な目に遭っていても、助けることができない。それがただ、悔しかった。

(サクラ様が羨ましい……)

唇を噛み締め、手を強く握り締める。悔しさから泣いてしまいそうになった刹那、ヴァイオレットの体はそっと誰かの腕によって抱き締められる。

「ヴァイオレット、そんなことを言わないでくれ」

ヴァイオレットを抱き締めたのはイヴァンだった。イヴァンに触れられるのはヴァイオレットが妻としての務めを果たすべきだと行動をしたあの夜以来のため、ヴァイオレットの心拍数は一気に上昇していく。

「僕は、ヴァイオレットやリオン、そしてアイリスが非魔法家系でよかったと思っているんだ。こんな僕に君たちは優しくしてくれる。僕はヴァイオレットを、そしてリオンとアイリスを守りたい。守るのは僕の権利だから。三人が傷付く姿を見る方が嫌だ」

「ですが、私は何のお役にも立てていません。偽りとはいえ妻なのに」

ヴァイオレットがそう暗い声で言うと、温もりがゆっくりと離れていく。顔を上げると、イヴァンが頰を赤く染めていた。

「それなら、夜会で踊ることになるであろうダンスの練習に付き合ってもらえないかな?僕は何年も夜会に出席していなかったから、うまく踊れるか心配でね。……僕と、踊ってくれませんか?」
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