人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
触れ合った手が、さらに熱を帯びた気がした。

「イヴァン様、ヴァイオレット様、練習もいいですがきちんと休んでくださいね」

ホールへやって来たリオンに声をかけられ、ヴァイオレットとイヴァンは踊るのをやめる。時計を見れば、もう二時間近く経っていた。

「もうこんなに時間が経っていたのか。早いね」

イヴァンが驚いた様子で言い、ヴァイオレットも頷く。そんな二人にリオンが声をかけた。

「お茶の準備ができてますから、一度休憩したらいかがですか?」

「そうだね。少し休憩しようか。ヴァイオレット、行こう」

「はい」

イヴァンに手を差し出され、ヴァイオレットは迷うことなくその手を取る。一緒にホールを出て行く二人を見て、リオンは優しい笑みをその顔に浮かべていた。

「そういえば、私は夜会に出席した際に他の貴族の方に「イザベル・ランカスター」と名乗った方がいいのでしょうか?」

ヴァイオレットとイヴァンたちは呼んでくれるものの、ヴァイオレットはイザベルの身代わりで嫁いだ身である。気になってしまい訊ねると、イヴァンはニコリと笑いながら言った。

「ヴァイオレットでいいよ。君が偽物の花嫁だってことは、もうみんなにバレちゃってるから。今更それを隠し通す必要はない」
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