人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
「そうですか……。わかりました」

偽物の花嫁だと周りに知られているなど、本来ならばあってはならない事態である。もしもイザベルに従順な使用人であったのならば、「役目を果たせていない」と発狂していたかもしれない。しかし、ヴァイオレットの心は逆に喜びで満ち溢れている。

(私は、私でいていいのね。イザベル・ランカスターじゃなく、ヴァイオレット・カッシングとしていられるのね)

イヴァンの隣で本当の自分でいられる、そのことがヴァイオレットはただ嬉しかった。初めて出会う本のページをめくる瞬間よりも、嬉しさを感じている。

(ここに来る前は、偽物でもいいと思っていたのに……。いつから私、こんなに欲張りになったのかしら。本当の自分のままイヴァン様のそばにいたいなんて)

繋いだ手にヴァイオレットは少しだけ力を込める。すると、イヴァンもギュッと握り返してくれた。恐る恐る顔を上げれば、優しく穏やかな顔をしたイヴァンと目が合う。またヴァイオレットの胸が高鳴った。

「イヴァン様、ヴァイオレット様、お荷物が届きました。カトレア・パルヴィン様からです」
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