人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜

「イヴァン様、どうしてペガサスがこの屋敷の前にいるのですか？王宮までは瞬間移動で行くのではないのですか？」

「フフッ。今日は夜会に久々に行くから、みんなを驚かせようと思ってね。……ソーサリー！」

イヴァンはヴァイオレットの問いに悪戯っぽく笑った後、呪文を唱える。すると屋敷のあちこちから真っ白な光の粒が集まっていく。光がペガサスたちの手綱となり、馬車を作っていく。その光景にヴァイオレットは言葉を失ってしまった。

「どうぞ」

金の装飾が施された美しい馬車の扉をイヴァンが開け、ヴァイオレットは「……ありがとうございます」と言いながら中へと入り、柔らかな椅子へと腰掛ける。イヴァンがヴァイオレットの隣に座り馬車の扉を閉めると、ペガサスの馬車はゆっくりと動き出し、空へと浮いた。

「ペガサスなら王都まであっという間だ。空の旅を楽しんでほしい」

イヴァンが笑いかけ、驚いてばかりのヴァイオレットは首を縦に振り、カーテンをゆっくりと開けて外の景色を見る。ヴァイオレットの真下には、ウィロウ地方の広大な緑が広がっていた。