人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
(まさかペガサスの馬車に乗る日が来るなんて、想像すらしたことがなかったわ)

ヴァイオレットが目の前を流れていく景色を見ていると、ふと隣から視線を感じる。振り返ると、イヴァンと目が合った。イヴァンは穏やかな目でヴァイオレットを見ている。

「イヴァン様?」

「そのドレス、やっぱりよく似合ってる。青もいいな」

ヴァイオレットの頰が赤く染まる。少し褒められただけだというのに、心の内側がどこか擽ったい。そして、ヴァイオレットは思っていたことを呟いてしまう。

「このドレスの色、イヴァン様の瞳のようですね」

このドレスを一目見た瞬間、ヴァイオレットの頭に浮かんだのはイヴァンの瞳だった。優しく、まるで空のような瞳の色は、イヴァンが贈ってくれたドレスによく似ていると思ったのだ。

「ヴァイオレット……」

イヴァンの顔も赤く染まっていく。どこか恥ずかしくなってしまい、ヴァイオレットは目をイヴァンから窓の外へと向けた。

馬車の中で二人はそれから話すことはなく、気が付けば馬車はウィロウ地方を抜けて王都へと入っていた。
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