人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
「でも、理不尽なことであたしたちは怒鳴られて責められるんだよ？ヴァイオレットが誰かのミスを押し付けられたかもしれないのに……」

ヴァイオレット以上に不安げな表情をミモザは浮かべていた。ヴァイオレットは「まだ決まったわけじゃないわ」と言い、ドアノブに手をかける。

「行ってくるわ」

「気を付けてね」

ドアを静かに閉め、ヴァイオレットはチャールズがいる応接室へと向かった。



「失礼致します。ヴァイオレット・カッシングです」

数十分後、一階の突き当たりにある応接室のドアをヴァイオレットがノックすると、中から「入れ」と低い声が響く。その声からは怒りを含んでいるのか、それとも別の感情があるのかわからず、ヴァイオレットの緊張は増した。

「失礼致します」

そう言いヴァイオレットが室内に一歩足を踏み入れると、無駄に豪華なシャンデリアの明かりが目に入り込む。部屋の広さは二十畳ほどで、異国から取り寄せたという長い高級なソファがヴァイオレットを出迎えた。

そのソファに、上等なスーツを着て髪をオールバックにしたチャールズと、何故かその隣に赤いドレスを着たイザベルが座っている。チャールズはどこか気難しそうな顔を、イザベルは退屈で仕方がないと言った様子で自身の持っている宝石を宙に浮かせて遊んでいた。
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