人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜

「私が非魔法家系だと知られているせいでしょうか？」

イヴァンの名誉に繋がらないかと一気に不安が押し寄せ、ヴァイオレットはイヴァンの手を強く握りながら訊ねる。イヴァンはニコリと笑い、「大丈夫」と言いながら歩き出した。

「きっと僕のことを噂しているんだ。僕はこんな事情を抱えているし、他の魔法家系とはほとんど関わりを持とうとしてこなかったからね。ヴァイオレットは何も気にしなくていい。せっかくの華やかな夜だ。楽しんでほしい」

「はい」

ドレスの裾を踏んでしまわないよう片手で軽く持ち、もう片方の手はイヴァンの腕に置きながらヴァイオレットは歩き始める。一歩歩くたびに視線が突き刺さり、自分が今まで触れることのなかった華やかな世界に足を踏み入れることに不安と緊張は大きくなる。しかしーーー。

（何故かしら？イヴァン様が隣にいてくれるのなら、何だか大丈夫かもしれない。根拠はどこにもないけど）

王宮の門を通り、中へと入る。王宮の中はヴァイオレットが予想していた通り、豪華な空間が広がっていた。床にはワインレッド色のカーペットが敷かれ、歴史ある骨董品や宝石や金が使用された豪華な調度品が並べられている。

（あの壺は、約百年前に芸術家のルートヴィッヒ・ブーゲンビリアによって製作されたものだわ！あっちの宝剣は約千年前のジニア王朝時代のもの！歴史的価値の高いものばかりだわ……）